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バードウォッチングの本質

penelopets.exblog.jp

故 T-Shiotaさんの遺志 (世界に誇るアマチュアバードウォッチャー)

 バードウォッチングの本質と大切なこと・・・・橋本君の依頼に答えて

*本質
バードウォッチングという遊びは、端的に言えば、大人の、高度に知的な趣味とでも言え
ばいいでしょうか。鳥を見て名前が分かり、色や模様、形や動作を観察して楽しむことは、大人でも、子供でも、誰でも自分流に、自分の好きなように、自由にできることです。しかし、これだけでは、鳥という生きものの非常に限られた部分しか見えてこないと思います。この部分を少しでも広く、深く限りなく発展させてゆくことに、本質的な面白さ、楽しさがあると思います。その為には、鳥に関する、出来る限り広範囲の知識を身につけ、それを色々な方法で増大してゆくことが、また楽しいものなのです。最も大きな達成感が得られるのは、自分が観察し、撮影し、そしてその結果を精査し分析して、何か新しいことを発見したり、未知のことを解明できたりした時です。
 色々なことを解明したり発見したりする方法のひとつが、年齢識別(Ageing)や性判定(Sexing)です。これが出来るようになるには、その基礎となる換羽や成鳥・幼鳥などの
羽衣の知識が不可欠です。さらに、これが出来るには、Topography(鳥体表部位<図>)が身に付いていることが前提です。
 このようなことは、アマチュアでも出来ることです。各人の出来る範囲や度合いはまちまちですが、少し努力すれば誰にでも出来ることです。専門家のみの活動分野ではありません。専門家でないと出来ないことは、その成果や知見をアマチュアは吸収し活用すればよいのです。鳥の繁殖行動や社会生活などは、鳥を多数捕獲して個体識別をし、長時間常時追跡調査をせねばなりません。また、生きた鳥や標本を手に取って詳細に点検したり解剖しなければ分からないことは、ほぼ専門家の分野です。アマチュアはこの調査・研究結果を、書物や図鑑などを通じて利用すればよいのです。ただ、例えば図鑑通りなのかどうか、実際に野外で出来る限り点検するのは、アマチュアの観察活動です。
 最初に「大人の趣味」と書きましたが、これは「バードウォッチングは、子供ではなく大人がやるもの」という意味ではありません。大人になっても、いや大人になればこそ多少難しいことも習得して、深く楽しむに値する趣味であるという意味です。日本では、このような意識が、一般にさほど普及していないように見受けられます。
*大切なこと
バードウォッチングで大切なことは、この趣味がもっと広まることです。大人も子供も
鳥を見るのが面白く、楽しいと思う人が増えることです。最初は鳥を見て名前が分るだけでいいと思います。とにかく、鳥に興味や関心を持つ人、バードウォッチングが面白くて楽しいと感じる人が増えることが大事です。このために、各地で多くのボランティアが探鳥会を行っているわけです。鳥に興味を持つようになった人は、鳥を守りたく思うでしょうし、その生息環境をいつまでも保全したくなるのは、ごく自然の成り行きです。その結果は、鳥だけでなはなく、他の生きもの、そして目先的には気が付かなくても、結局はヒトにも有益となります。
 バードウォッチングを広めるためには、いろいろな形の情報発信が必要です。自分が知り得たこと、知りたいこと、分からないこと、疑問に思うこと、気付いたこと等々を最大限公表することが大切です。バードウォッチングは自分ひとりの宝物や秘密のように取り込んでしまうような趣味ではありません。例えば、バードウォッチングの歴史が長いイギリスでは、国中のバードウォッチャーが雑誌や機関誌に発表した多くの観察記録を基にして大巻の図鑑が出版されています。今から70年も前のことです。また日本野鳥の会の会員数は数万人ですが、人口が半分以下のイギリスでは鳥類保護協会の会員は100万人を優に超えています。社会での存在感や発言力の強さは押して知るべしです。
 現今、情報の交換や取得は、国内外を問わず、インターネットで容易にできます。ただ外国との交信には、少なくとも英語の読み書きがあまり苦労なく出来ることが、求められます。鳥の本や図鑑や雑誌は外国語で書かれたものが多く、しかも、内容の優れたものが少なくなく、これらを活用するためにも、英語力の鍛錬は鳥を知るための強力な道具になることでしょう。
                                (2006年/8/30 記) 





上記は私(橋本)が師匠にお願いして当時2006年に書いていただいたものです。
私のブログに掲載させていただきたいというご了承も得ていました。
その後2009年9月20日に師匠はお亡くなりになり、さまざまなことがありましたが
この度、やっと世にだせることとなりました。

弟子の私としては、師匠のこの名文を
一人でも多くの方に読んでいただきたいので、ご覧いただいた皆様には是非御友人の方にも紹介していただければ幸いです。

またこの記事を紹介、リンクしていただければ非常に嬉しく思います。

師匠は、日本野鳥の会の本部の記録委員会のメンバーのお一人でもあり、全国の識別の難しい記録の同定などされていました。
日本野鳥の会大阪支部幹事歴33年、万博探鳥会リーダー歴25年。
大阪支部報、むくどり通信投稿数180編。ミニ野鳥教室30回。
お仕事の関係でインド、香港に駐在され、語学に抜群に強く、海外の識者とも文通をされ
日本だけでなく世界にも知れた存在でした。あのPeter Grant やLars Svenssonとも
文通されていました。

高野伸二さんの著書「野鳥を友に」その他の問題点で、シギの幼鳥羽について有益な
指摘を受けたと記述されています。


尚、むくどり通信 2010年3月号No。206号には、追悼記事の中に、この「バードウォッチングの本質と大切なこと」は一部掲載されています。
追悼記事の執筆者は私、室屋勝美さん、久下直哉さん、木村力さん、大月隆さん、大西敏一さん

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T-Shiota
1938年7月14日生まれ
2009年9月20日逝去

追記
2017.11月号 NO,250「むくどり通信」250号記念特集 むくどり通信アーカイブスに一部再掲されています。


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# by penelope-ts | 2011-01-23 22:49

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